鈴木鎮一(スズキ・メソード)の奏法を研究する会

※スズキ・メソードとは直接関係ありません https://www.youtube.com/channel/UCwgEn8nYsP3QsvR0MhQC0OA

バイオリン奏法における音色と無意識の問題(4)型の問題

「4スタンス理論」では、人体の正しい動かし方は一つではないと説く。それにはA1,A2,B1,B2の4つあり、ゴルフクラブの持ち方が人それぞれ異なるらしい。これはバイオリンの弓の持ち方にも当てはまる可能性がある。

「型」はその動作を無意識に行う上で重要な役割を果たすと思われる。もしその型が自分にフィットしていれば、ただそれを真似るだけでよく、他にやるべきことは何もないからである。もしその型をなぞろうとして、かえって演奏パフォーマンスが落ちるならば、その型はフィットしていないことになる。

よって、演奏するときの「方法」を教科書やビデオ、音楽教室で学ぶ際は、それが自分に合っているかを自分の身体自身に問いかけて取捨選択していくことが必要になる。この意味で、「自分の師匠は自分自身」と言えるであろう。

バイオリン奏法における音色と無意識の問題(3)腕の一体化

スズキメソードの教本では「狐の顔」のように指先で弓をつまむように指導している。これは特定の人には有効かもしれないが、私にとっては無意味であった。私の体に合った弓の持ち方は、次の通りのようである。

(1)弓に対して手を斜めにあてがう

(2)弓を立てて前で横に振って力を抜くトレーニングでは、手を斜め下に向けてもつ(手首が上側、指先が下側)

(3)弓を横にして前で縦に振って力を抜くトレーニングでは、手を右斜めに傾けてもつ(手首が右側、指先が左側にくる)

(4)上の(1)~(3)を原型としてから指を丸くすると、弓が手に引き付けられた状態になる

(5)このとき上腕~肩の筋肉が収縮し、弓は「吊り上げられた」状態になり、この状態で演奏すると指先から肩、肩甲骨までが連動し「腕が一体化」する。

 要は、指先から腕、肩、肩甲骨までをどうやって一体化させるかが重要なポイントになる。

バイオリン奏法における音色と無意識の問題(2)力を抜くより重要な無意識

バイオリンの演奏で、良い音を出すために「力を抜く」ように指導をすることは少なくない。しかしこれを意識的にやろうとすると、局所的に力が抜けるだけで、代わりにどこか別のところに力を入れてやらなければならなくなるであろう・・・

 

たとえば弓を力を抜いて持つ場合、ふつうは手の力を抜くことになる。その結果、特定の指だけで弓の重さを支え、前腕が脱力した分上腕に力が入ってしまう。そうしないと弓を落としてしまうからである。その結果、腕の力は弓を支えることに使われてしまい、結局肝心の「演奏」のために使われなくなる。そして音量・音質にも限界が出てくる。

 

それでは弓を力を入れて持たなければいけないのかといえば、それは場合による。力を入れるにしても、「どうやって力を入れるか」がポイントになると言えるだろう。たとえば、弓の重さを支えるために指に意識的に力を入れている場合は、意識が弓を持つ方に集中してしまっているので、運弓に意識を向けることが出来なくなる。このような場合、弓の持ち方が自分に合っていないケースが多い。

バイオリン奏法における音色と無意識の問題(1)コントロールの弊害

通常、バイオリンの運弓は、次の2つの点で繊細な「調整」をするようにトレーニングされることが多い。

(1)弦に対して直角になるように腕の伸ばす方向を弓の位置によって鏡を見ながらコントロールする

(2)雑音が出ないように繊細に弦に加える圧力を調整する。音がつぶれないように最小限の圧力で最大限の音量を出すように様々な繊細な注意を払う。

 

これらの問題は、腕の筋肉のパフォーマンスを最大限に発揮できない点にある。コントロールや繊細な注意の方に筋力が使われてしまい、運弓の主目的である発音が十分に行われない。

 

そもそも、バイオリンと弓を十分安定して保持することさえできれば、上記の2つのコントロールは不要である。そして、無意識に運弓を行うことが可能になる。このとき、弦には非常に強い力がかかり、弦と馬の毛の張力・弾力は腕にも伝わり大きく引っ張られることになる(そのため、クライスラーの言うようにバイオリンは長時間練習するべきではない)。